2003.03.11
このたび潟潟uランひと住文化研究所(所長・鈴木雄二)では、「家族と住まいとの関係意識調査」を実施しました。この調査は、家族の生活、特に子育てとの間に大いに関係がある住まいに対して、分譲マンションを購入した人々はそのような視点に対してどのように意識しているかを調査したものです。
家族と住まいに関する意識調査結果
T.目的
1. 夫婦の部屋に関する意識の把握
・ 別室化傾向の把握
・ 子育てとの関係
・ 寝室以外に必要とする機能
2. 子育て期家族の寝室の実態把握(川の字に寝る事の重要性の認識)
3. 夫婦のコミュニケーション時間と共有する場との関係把握
|
U.注目すべき結果
| 「川の字」から夫婦別室へ、夫婦別室化傾向はより進展していく。 |
| 1. 今回の調査では、夫婦の寝室に対する別室志向は35%という結果が出ました。更に、「川の字」を卒業した夫婦のうち、30%は実際に夫婦の寝室を別室にしていると答えています。「川の字」での就寝は、全体の90%が経験をしておりますので、日本人の夫婦別室化傾向は、より一層進展していくものと思われます。
2. 川の字」後の夫婦別室率が30%である事は、川の字に寝ている段階から寝室は夫婦2人の部屋ではないことを享受しており、そのことにより容易に別室を選択できると考えられます。つまり、「川の字」は一方で、夫婦別室意識を醸成する面があることも指摘できます。
3. 子育てにとって、「川の字」を78%が重視し、反対に、夫婦の寝室が別室である事は「子どもに悪い影響を与えているとは思わない」とするのは63%、夫婦の関係が家族の関係の中心にあるという意識は、あまり多くは見られません。
4. 夫婦の寝室に欲しい機能は、書斎43%、会話スペース38%に対して、バスルーム5%、トイレ9%と少ない。多く供給されている住宅の殆どは、バスルームやトイレ等の水廻りを独立で有するものが少ないという現状を反映しているという側面と共に、夫婦を単位とするプライバシーについての意識の低さを反映しているといえます。
5. 夫婦よりも家族との会話を重視する傾向が強い。(9%対49%)更に夫婦の会話重視の傾向は男性が女性より多い結果(52%対41%)は、子どもと過ごす時間が短い男性は、家族とのコミュニケーションが少ない現状を反映し、それを妻との会話の中で求めようとする意識が現れていると推測されます。
|
V.調査のまとめ
初めて分譲マンションを取得するファミリー世帯(子供がいる或いは予定がある)にとっての購入動機として回答する中で、最も多いものは、「家が狭くなった」というものです。この回答の裏側には、家族のため、つまり子供に個室(勉強部屋)を与えたい要望があります。また、プランを選ぶ際に重視している部分として、「リビングルームの広さ」を挙げている事例も非常に多い傾向にあります。
斯様に、我々は、「子ども」の教育や「家族」との団欒という視点、つまり大きな意味で「家族」のしあわせを考えて住まいを選びます。そこで、家族の生活を、就寝形態、夫婦の寝室を中心に調査する事で、我々日本人の家族観、住まい観を検証してみることとしました。
まず、夫婦関係やプライバシーが住まいの中でどのように位置付けられているのかを把握することで、夫婦関係が家族の中心にあるか否かを見ることができると考えました。大別すると、夫婦寝室は別室か同室かに関する設問と夫婦寝室の機能に関する設問の2つになります。更に、「川の字」という親子同室の就寝形態が前者の設問と関係させる事で、この就寝形態が持つ意味も併せて捉えてみる事にしました。
今回の調査では、夫婦の部屋の「別室化」傾向が進展していくことが明確に現れています。日本では、特にこの調査対象の中心でもある子育て世代においては、「川の字」での就寝が多く行なわれているといわれていますが、今回の調査でも約90%が「川の字」を経験、或いは現在も行なっていると回答しております。更に、「川の字」を経験した夫婦のうち、それを卒業した後に、夫婦寝室を別室とした夫婦は30%という高い数字を示しています。特に、30台の夫婦では38%と今現在子育て期にある夫婦がより高い数字を示していることが大きな特徴といえます。このことからは、日本では夫婦の寝室の別室化はより進展していくものと推測できます。
夫婦がひとつの部屋で寝起きするという同室での就寝は欧米では例外なくそうですし、世界的にも一般的な就寝形態です。日本だけが夫婦別室化が進んでいくといえるでしょう。それでは、なぜ、このような傾向を示すのか、以下そのことについて考えていきます。
リビングルームに隣接した和室という間取りは、一般の分譲マンション、特に子育て世代がターゲットであるファミリータイプにおいて見られる典型的な間取りですが、これは、「川の字」という親子就寝形態へのニーズを反映しているようです。(78%が重要と回答)ところが一方では、この形態はその後の夫婦別室率の高さ(30%)を見ると、夫婦別室化の温床になっている面があることも指摘できます。
そもそも、「川の字」での就寝は、日本の場合住宅事情も大いにあったと思われますが、今回の調査対象である分譲マンションは、概ね75u〜80uの広さのマンションですから、そのような面は解消されているといえます。しかしながら、それでも「川の字」就寝が、今尚、主流であるという背景には、近代家族の特徴である「性別役割分業」意識が日本の場合、まだまだ色濃く残っている事に原因があるのではないのでしょうか。つまり、家事だけではなく、育児も母親が責任を持つべきである、言い換えば子どもの成長に絶対的に重要なのは母親の存在であるという考え方が、潜在意識として「川の字」を選択し更には重要視させていると考えられます。つまり、「川の字」を、夫婦の寝室に育児期の子どもが就寝しているのではなく、母子同室に夫が就寝しているとする意識を強く有する夫婦が、「川の字」を選択していると考えられます。また、そのことが後の夫婦別室を容易に選択している背景にもなっているのではないかと指摘することができます。
また、一方では、夫婦の間に子どもが就寝する「川の字」という形態自体が、夫婦の会話や親密さを減らし、夫婦関係を希薄にしてしまうことに繋がっているとも考えられます。
夫婦のプライバシーの象徴でもあるバスルームやトイレ等の水廻りを寝室の付加価値機能として選択する割合の低さからみると、夫婦関係を住まいの中心に置こうという意識もあまり見られません。住まいの中での寝室の位置付けの低さがでた今回の結果といえます。
個人化、情報化した現代社会の中では、家族は自然に成り立つものでなくなっており、特に子育ては非常に困難な時代にあります。母親との絆しか形成されないことによる子どもの家庭内暴力等の問題を考えるとき、現在の家族の姿を問い直す必要があると思われます。今回の調査では住まいとの関係において、主として「夫婦の寝室」についてそれを見てきたわけですが、「川の字」「夫婦別室化」という特徴が示している事実からは、「性別役割分業」意識による育児、教育は母親の仕事であると言う考え方がまだまだ根強いものがあることを伺わせます。
住まいは家族のしあわせの為に購入する(建てる)ものであるならば、その住まい選びについては家族、夫婦との関係を更に深く考えることの必要性を私たちに感じさせる指摘する調査となりました。
W調査方法
|
1. 調査対象
一都三県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)在住の主婦及び都内通勤の会社員(銀行、百貨店、
生保、IT、旅行)いずれも、分譲マンション居住者、子どもがいる世帯(20代:10%、30代:52%、40代:26%、
50代12%)、回答407(回答率58.6%)
2. 調査方法
アンケート留置形式(ポスト投函、企業担当者手渡し)
3. 調査期間
平成14年10月〜平成15年1月
|
X.調査結果
<単純集計結果>
(1) 親子で川の字に寝ることの重要性の認識:
「思う」 149人(37%)
「どちらかといえば思う」 165人(41%)
「どちらかといえば思わない」 56人(14%)
「思わない」 30人( 7%)
無回答・その他 7人( 2%)
(2) 子供が何歳になるまで「川の字」で寝ていたか? (第1子)
1歳まで 13人
3歳まで 47人
小学校入学まで 76人
小学校入学以降も 50人
現在も 178人
一度もない 28人
不明 11人
(3) 川の字をやめた直後からの夫婦の寝室:
「同室である」 135人(33%)
「別室である」 59人(14%)
無回答・非該当 213人(52%)
(4) 居住スペースがあれば、夫婦別室にしたいと思うか:
「別室にしたいと思う」 143人(35%)
「別室にしたいと思わない」 262人(64%)
無回答・その他 2人( 1%)
(5) 夫婦の寝室が別室であることの子どもへの影響に関する考え:
「よい影響を与えると思う」 17人( 4%)
「悪い影響を与えると思う」 114人(28%)
「子どもの成長には影響ない」 257人(63%)
無回答・その他 19人( 5%)
(6) 各居室の広さの希望(平均):
リビングダイニング 16.8畳(51%)
夫婦の寝室 9.2畳(28%)
子ども部屋 6.7畳(20%)
(7) 夫婦の寝室に欲しい機能(1位に挙げられたもの):
書斎 176人(43%)
会話スペース 153人(38%)
バス・シャワールーム 20人( 5%)
トイレ 38人( 9%)
無回答・その他 20人( 5%)
(8) 育児の夫婦における分担に対する考え方:
「母親がするべき」 3人( 1%)
「母親が中心で父は手伝い程度」 238人(58%)
「父親も主体的で公平に負担」 134人(33%)
「父親が中心になるべき」 11人( 3%)
(9) 家族の会話・夫婦の会話がどれだけ必要だと思うか(平均):
家族の会話の必要時間 106.2分
夫婦の会話の必要時間 77.7分
(10)夫婦の一日あたりの会話時間(平均):
45.2分
(11)家族の会話と夫婦の会話のどちらを多く必要と考えるか:
「家族>夫婦」型 200人(49%)
「家族=夫婦」型 150人(37%)
「家族<夫婦」型 36人( 9%)
無回答・その他 21人( 5%)
本件に関するお問合せは、下記までお願いします。
潟潟uランひと住文化研究所
主任研究員 小澤 満
|