Life style magazine

暮らしスタイルマガジン
「てまひま手帖」

「できる時にやる」が鍵。住んで育てるコミュニティ

お客様インタビュー (更新: )

▲夏に「エコヴィレッジ鶴瀬」の中庭で開催された流しそうめん大会。「やったことがなくても、まずはやってみる」スタンスで楽しんでいる。(提供:エコヴィレッジ鶴瀬入居者)

埼玉県にある「エコヴィレッジ鶴瀬」。ここではマンション暮らしをより豊かに楽しくしようと集まった有志の住人グループによって、ユニークなイベントが開催されています。「Green Party」という名のもとに活動するみなさん。一体、人が集まる愉快な場をどのようにつくっているのでしょう? その秘訣を知るため、ハロウィンならぬ「イモウィン」パーティーに編集部が潜入しました。

パパたちが楽しげなGreen Partyって?

Green Partyメンバー・藤岡さん(左)。20代からハイキングクラブの企画を担ったり、旅好きが高じて仲間を募って島旅ツアーを企画したりと、人が笑顔になる場づくりに携わってきた。マンション副理事長の大久保さん(右)は、子どもたちの成長も優しく見守ってくれる、みんなのおじいちゃん的存在。

藤岡さんエコヴィレッジ鶴瀬へようこそ! 今日は「イモウィン」ですよ〜!

編集部 わぁ、なんだか楽しそうな雰囲気! Green Partyの活動はいつから?

藤岡さん 今年で3年目ですね。エコヴィレッジのイベント自体は、リブランがコミュニティ形成のために定期的に開催していたんです。でも、ある日当時の管理人さんから「そろそろみんなでやったら?」と住民主体の運営をすすめられて。その頃、僕は単身赴任から戻って来たばかりで、エコヴィレッジ内に知り合いもあまりいなかったし、20代からイベント企画や祭りごとは好きだったので、「じゃあやってみようか」と。

イベントは子どもたちも心待ちにしているハレの日。ママたちが手づくりで用意したハロウィン仕様のフォトブースに大興奮。

編集部 へえ〜! メンバーはどうやって集めたんですか?

藤岡さんまずはできるところから始めようと、有志で集まったパパたちと夏場の草取りをしたんです。エコヴィレッジ鶴瀬には中庭があって、植栽の手入れはプロの方にお願いしていたのですが、自分たちでやれば愛着も湧くし共益費も少しは抑えられる。それから、秋は共用菜園でのイモ掘り&焼きイモ会をイベント会社が主催していたので、自主運営に切り替える前にボランティアとして手伝わせていただいて、運営のノウハウを教えてもらいました。「緑の会」という名前も、「もっとおしゃれにしたいね」って話したら、メンバーが「Green Partyはどう?」と提案してくれたんです。

編集部 Party?

藤岡さん「イベントが終わった後、どうせみんなでビールを飲むからぴったりでしょ?」って(笑)。

大久保さんGreen Partyの活動は、理事会でもちゃんと承認しています。マンション内にこんなコミュニティがあるのは珍しいですよね。本当にみなさん、よくやってくださっています。

「気楽さ」がコミュニティづくりの秘訣

運営に携わる深沢さんは、「準備は毎回大変だけど、友だちの輪が広がるのが嬉しい。主人の知らなかった一面も見られたりして面白いですよ」と話す。

編集部 夏は流しそうめんなど、さまざまなイベントを仕掛けているそうですが、今回の「イモウィン」はママから生まれた企画だったとか?

深沢さんもともと3年くらい前に、ママたちの有志が集まってスタートしたハロウィン企画なんです。最初はマンション内の5〜6世帯からスタートして、仮装した子供たちがその家にお邪魔してお菓子をもらう、という典型的な形でした。年々参加人数が増え、気がついたら80人以上の大規模なイベントになってマネージが難しくなったので、「Green Partyが主催しているイモ掘りの企画と組み合わせて一緒にしない?」と相談したんです。それで、翌年からGreen Party主催のイベント「イモウィン」として開催することになりました。

藤岡さんイモ掘りとハロウィンを両方楽しむから「イモウィン」(笑)。お菓子づくり上手なママがつくったデコレーションスイーツ、ご覧になりましたか?

「フォトブースだけだとつまらないから」と、貼り絵コーナーまで! 工作用の紙は、当日仕事で来られないママたちが手分けして仕上げたそう。それぞれのスキルを活かして役割を担当するのが、楽しく続けるためのポイント。

編集部 完成度が高すぎる……!これは子どもたちも喜びますね〜!

深沢さん素敵な切り絵も、紙工作が得意なママがつくってくれたものです。ママたちのグループには裏ボス的な方がいるのですが(笑)、彼女が声をかけて色々な人を巻き込んでくれています。連絡は大体LINEですね。コンセプトを決めたらブースごとに担当を割り振って、行ける人たちで買い出しをします。みんな仕事も家事もあるから、やれる範囲で分担してやって。

編集部 こうしたマンション内のイベントって、「全員が関わらなければいけない」感がどうしても出てくると思うのですが、その辺りのコミュニケーションはどうしているんですか?

藤岡さんなるべく、「好きなタイミングで参加してね」と伝えるようにしています。案内はロビーの掲示板に出しますが、それぞれ仕事や家族の事情もあるし、来られない時はそれで良い。本当に誰かいないと困る時は「助けて〜!」と掲示しますが(笑)、そうじゃ無ければなんとかします。以前、うちの子どもたちが通っていた小学校には「オヤジの会」というのがあって、こういう活動を「できる人が、できる時に、楽しみながらやる」というポリシーでやっていて。それがとても良いなぁと思ってGreen Partyでも取り入れたんです。「次の日曜日だったら行けるから参加しようかな?」って気楽に楽しく感じてもらえるようにはしたいですね。

家族ぐるみの付き合いで縮まる距離感

Green Partyの新メンバー・二木さん。ご近所付き合いを広げたいと思って、今年のイベントから参加。

編集部 二木さんはどんな流れでGreen Partyに?

二木さんロビーの掲示板に貼り出されていた流しそうめん大会の告知を見て、活動を知りました。それまで気づかずにサーっと前を過ぎていていたんですけど、息子が参加したそうに見ていて。申し込みは過ぎていたのに、Green Partyのメンバーに声をかけたら「いいですよ」って快く受け入れてくれたんです。懇親会の時に色々話を聞いて、参加することにしました。

編集部 「来れる時に来ればいい」っていうひと言があるからこそ、継続してコミュニティにコミットできるのかもしれませんね。

二木さん参加しやすい状況がつくられているのはありがたいですね。今では、家族ぐるみの付き合いをイベントで楽しんでいます。

藤岡さんそう思っていただけたら本望ですね。ママたちも子どもを通じて知り合う機会は多いのですが、子どもの年代が違うママ同士は接点が生まれにくいんです。ふとした瞬時に、これまで関係が無かった人との出会いが生まれると面白いですよね。そうやってみんなの距離が少しずつ近づいて、「また何かやろう!」という話になれたら嬉しい。

編集部 いいですね〜! 共同住宅で暮らす新たな醍醐味が感じられそうですね。

藤岡さんこのエコヴィレッジは219世帯から成るので、人数で換算すると700〜800人くらいになる。こんなに人がいるのだから、できないことは無いはず。そう思えることも続けるモチベーションとしてありますね。イベントが終わった後は、「ワンコイン懇親会」を企画しています。ワンコインなら気軽に参加できるし、ご褒美が待っていたらどんなに大変でも頑張れるから。特に暑い日の活動はしんどいので、「ビール冷やしてるからね〜!」って誘って。まぁ、大体ワンコインでは収まらなくなりますけど(笑)

編集部 素晴らしい!ちゃんと労わることも大切なんですね〜。

共感する仲間が暮らしを豊かにする

「エコヴィレッジのコンセプトに価値を感じて暮らしている人が多いからこそ、イベントを仕掛けることができる」と藤岡さん。常にオープンであり続けることで緩やかに共感者を増やし、そのコミュニティがここにしかない価値を生み出している。(提供:左/リブラン、右/エコヴィレッジ鶴瀬入居者)

編集部 コミュニティの結束力を高めるだけではなく、暮らしを豊かにするために日々活動しているんですね。

藤岡さんそういう仕掛けのひとつになったらいいなって思っています。自分の漠然とした考えですが、子どもたちがいずれ大きくなって、「みんなとのイモ掘り楽しかったな」とか、ここで過ごしたことがいくつかの原風景として心のなかに持ってもらえたら嬉しいですよね。もともと、僕はマンション派ではなく、一戸建て派だったんです。どうせ暮らすなら、自分が描いていたご近所づきあいのある暮らしがしたい。マンションって、隣同士の人の顔も知らなくても生きていけるっていうイメージってありません?

編集部 そう言われてみたら。

藤岡さんでも、案外一戸建ての方が隣の家と距離を感じてしまうことってあるんですよね。本来は、マンションの方が話せる環境をつくりやすいはず。実は、僕だってこう見えてそんなに誰とでも友達になれるタイプじゃ無いんです。でも、子ども繋がりはすぐにできるのに、その他の繋がりはなかなか生まれないのって、やっぱりもったいないと思って。

編集部 価値観を共有する仲間が増えたら、もっと色々なことにチャレンジできそうですもんね。

藤岡さん最近では、料理が得意な方に柚子胡椒のつくり方を教えてもらったり、おいしい梅酒の漬け方を学ぶ大人のためのワークショップも企画してみたいと思っています。自分でつくるのは面倒だけど、みんなでつくれば楽しいですから。

編集部 知っている顔がマンション内に増えると、集合住宅っていうより大きな家みたいですね。

藤岡さんそうですね。10年後に活動の内容が変わっていたとしても、「面白い人がここにはたくさんいる」ということを見つけられる場でありたいですね。

仲間と頑張った後のご褒美ビール。何にも代えがたい、幸せな瞬間。

イベントの後は、みんなで鍋をつくって懇親会。その途中、パパのサプライズ誕生日会をみんなでお祝いする姿があったり、子どもたちが夢中でご飯を食べている間、大人たちはのんびりビールを楽しんでいたり、本当に大きな家族のよう。楽しげなコミュニティは、住まいを共にする仲間たちの気楽な気持ちの持ちよりで少しずつ育つもの。そんな誰もがマネして小さくスタートできそうなヒントがありました。


企画:株式会社リブラン
⽂:原⼭幸恵(tarakusa)
写真:⼩賀康⼦(提供写真以外すべて)