PERSON

当たり前に生の音楽に
触れる機会がある
そんな社会にしていきたい。
ミュージション事業 宣伝職戸口木綿子

音楽を仕事にする道を見つけた

戸口木綿子は仙台の出身だ。大学で声楽を学び、卒業後もオペラ団体に所属して歌手活動を続けていた。しかし音楽だけで生計を立てることは難しい。建築CADメーカーの仙台支店に就職し、音楽は趣味と割り切った。やがて転機が訪れる。東日本大震災の後だった。
被災後しばらくは音楽を楽しむことができなかったが、震災から半年後、コンサートへの出演を依頼され『アヴェ・マリア』を歌ったとき、客席で涙を流しながら耳を傾け「今日まで生きてこられて本当に良かったと思えた。音楽はすばらしい」と話してくれた人がいた。「うれしかったですね。同時に“生きていくこと”と“音楽”を結びつけることが、私の使命だと思いました」と戸口は振り返る。「音楽と住まいを組み合わせ、イベントを企画したり音楽家や音楽が好きな人に部屋を紹介する仕事をしたい、と思いました。地元のマンションデベロッパーに転職しましたが、震災復興需要に沸く仙台にはその必要性がありません。東京はどうだろうかと、仙台に居ながら東京の仕事先を探しました」。
転職サイトなどで浮かびあがったデベロッパーや住宅会社、設備メーカーなどと面談を重ねていたある日、転職エージェントから「あなたしかいない」というオファーを受けた。それがリブランだった。戸口はすぐに東京に向かった。
音楽を仕事にする道を見つけた

音楽を愛する人の暮らしを応援する

「仙台から一次二次と面接で二度も上京するのは大変だから、一日ですべて済ませましょう」という会社の配慮に、戸口の気持ちは初めて知るリブランという小さな会社に惹きつけられていた。そして「当社の『ミュージション』という24時間楽器演奏可能な賃貸マンションの仲介の仕事をしてほしい。入居者の募集だけでなくイベント企画や住んでいる人のコミュニティづくり、運営にも携わってほしい」と要望されて、戸口の気持ちは大きく傾いた。
「まさに私がやりたかった仕事でした。“生きていくこと”と“音楽”が結びついたマンションを扱い、たくさんの音楽家・音楽愛好家を相手に仕事ができる、そして家族のように温かい会社のみなさんと楽しく過ごせそうだと感じて、入社を決断しました」。
着任後は、まず入居者との関係づくりから始めた。エントランスホールで会えば、挨拶をして立ち話をし、SNSを活用して入居者の活動状況を知り、ライブやコンサートに足繁く通った。少しずつ関係がつくられ、声も聞こえてきた。「私が来る前もイベントは実施されていたのですが、ライブセッションはあったので、クラシックの人が参加できるものを作りたい、仕事につながる出会いを求める人の力にもなりたい、音楽で食べていく支援がしたいなど、単に防音の住まいを提供するだけでなく、音楽のある暮らしや音楽家の活動を応援するのが『ミュージション』の役割と考え、何ができるか、アイデアを出し合っていきました」。
音楽を愛する人の暮らしを応援する

ファミリーコンサート開催。合唱団も結成

戸口が先ず取り組んだのが、音楽家のためのセミナー企画だった。入居者の声を聞きながら、活動に役立ててもらうメニューを考えていた時、偶然SNSで見つけた演奏家向けのコンサート企画に関する勉強会で、これだと思った。その勉強会の主催者に講師を依頼し、プログラムの内容を打ち合わせ、参加者募集のチラシを配り、当日の運営もした。「ファンが増えるチラシづくりセミナー」「盛り上がるMC講座」「演奏家のための営業力強化講座」など、3カ月に1回のペースで開催。「まさにそこが知りたかった」と毎回好評を博し「ミュージション」の定期イベントとして定着していった。また「エコヴィレッジ」で暮らす家族を対象にしたファミリーコンサートも企画した。プロの演奏家には仕事の場の提供であり、音楽教室を開いている人には生徒募集のきっかけにもなる。そして「エコヴィレッジ」の家族には、小さな子どもとの暮らしの中でなかなか生の音楽に触れる機会がつくれない中、貴重な体験を提供する場となった。さらに、自ら歌手活動を続けてきたこと、また「ミュージション」の入居者の間に「学生時代に歌っていたのでまた歌いたい」という声があるのを知って「みんなの合唱団」の結成を呼びかけた。講師には人脈を活かして世界で活躍中のバリトン歌手を招くことに成功。入居者だけでなく、リブラン社員の有志や「ミュージション」の近隣住民も参加して、総勢約20人が集まり練習を重ねて、ついにステージにも立った。
ファミリーコンサート開催。合唱団も結成

音楽と共に生きる文化をつくりたい

入社以来、ミュージション事業部で営業の仕事を続けてきた戸口は、2018年の春から宣伝部のミュージション担当に移った。役割は「ミュージション」の宣伝広告関連業務のすべてだ。パンフレットやチラシの作成、新築物件のプロモーション、主催イベントの企画宣伝、ホームページやSNSの運営などを担当している。営業部時代よりは一段高い視野で「ミュージション」の認知拡大を図り、リブランのミュージション事業そのものを拡大していく基礎をつくっていくことが任務だ。「今、私の目標は2つです。1つは『ミュージション』を全国に広めること。私の地元の仙台には絶対に建てたいですね。そのため仙台でのコンサート出演やセミナー企画、母校の大学の同窓生ネットワークの活用を進め、認知度を高める準備をしています。もう1つはママ演奏家支援の仕組みをつくること。実は私自身が入社後に結婚と出産を経験し、今子育てをしながら働いています。私は会社の制度や周囲の応援をいただいて短時間勤務をしながら育児と仕事を両立させていますが、フリーランスの演奏家が子どもを育てながら活躍することは非常に難しい。知恵を絞って、支援の仕組みを考えたいと思っています」。
入社から間もなく6年。戸口はリブランとの出会いを本当に幸運だったと振り返る。「地方では絶対に会えなかった音楽界の重鎮ともいえるような方とお仕事ができたり、未来のスターを応援できたり、お客様と一緒に音楽ができたりと、入社前に思い描いていた以上の仕事を次々と実現できています。現代の多くの社会問題には人の心が関係しています。こんな時代にこそ“音楽”が街にもっとあふれるべきではないでしょうか。真剣なまなざしで演奏する音楽家に出会うことで、自分も頑張ろうと思えたり癒されたりする。その小さな奇跡が、日本中に広まることを支援したい。当たり前に生の音楽に触れる機会の創出を住まいとコミュニティ両面からサポートし、音楽家が正当に評価される社会にしていきたいですね」――戸口の夢は大きい。
音楽と共に生きる文化をつくりたい

一日の仕事のスケジュール

9:30 8:45
出社。メールやSNSのチェック。必要な返信・発信を行う。
10:00 10:00
「ミュージション」の新しいパンフレットのデザインを検討。
10:00 11:00
ホームページのアクセスデータの確認。改善点の検討。
12:00 12:00
昼食。「ミュージション」の営業担当と食事をしながら情報交換。
13:00 13:00
イベント担当と準備中のイベントについて打ち合わせ。集客についてアドバイスをする。
13:00 14:00
企画中の「ミュージション」の設計や仕様について、担当部署と意見交換。音楽家の立場から提案をする
15:00 15:00
翌日の会議用の資料作成。
17:00 16:15
帰宅(時短勤務中)。幼稚園バスを出迎え、子どもと一緒に帰る。ここからはママになる。