住まいにできる限り多くの風の通り道(Breeze Line-ブリーズライン以下BL)をつくりたい。そこで、ある物件で採用となったのが「
着替える建具
」です。季節によって、建具を替える。第1回でお話しした
田の字プラン
を無くしたい、という強い思いから、このアイディアにたどり着きました。しかしこの「着替える建具」へ行き着くまでの道のりは、平坦ではありませんでした。
エコヴィレッジ鶴瀬は、全219戸で、20タイプの間取りがあります。それぞれのタイプをどのような間取りにするのかを考えるのが私の仕事です。そして考えたプランを社内で行われる会議
で、プレゼンテーションします。
最初のプレゼンテーションでは、それぞれのプランについて、まだまだエコミックスデザイン
の完成度を高めることができるのではないか?もっと住戸内での
風の通り道(BL)
に工夫ができるのではないか?と言われました。かなり頑張って考えたプランなのに。「でもやってやろうじゃない!」私の闘争心は高まりました。
2回目のプレゼンテーションでは、第2回でお話した
ウィンド・スルー・クロゼット(WTC)
の活用などにより、風の通り道(BL)を多く確保することに成功。多くのプランが採用されました。ですがひとつ、問題が残りました。どうしても住戸内の風の通り道(BL)がひとつしかないプランがあるのです。
「このプランについては、これ以上方法がないのか!」という声もあがりました。そう言われた時、具体的なアイデアは見つかりませんでした。しかし絶対に妥協をしたくなかった。
「もう一度、考えさせてください!」。
それからと言うもの、そのプランについて考えない日はありませんでした。苦悩の日々。しかし答えは、意外と近い場所、伝統的な日本家屋にありました。
そして3回目のプレゼンテーションで提案したのが「着替える建具」です。
では、どこを着替えるか?それは和室にある天袋の扉です。通常は、襖の扉ですが、風通しを良くしたい夏には、それをガラリ戸へと着替えます。しかし、風を通すには、風の入口と出口が必要です。そこで、反対側の洋室の収納上部を吊り上げて開く「
蔀戸(しとみど)
」にしました。これで、
ふたつの部屋をつなぐ風の通り(BL)をつくる
ことに成功しました。建具を着替えるという、もともと日本建築にあった発想が大きなヒントになったのです。
発想を見つけだすまでには、苦労と苦難がいっぱいでした。しかし壁を乗り越えて見つけた答えは、これ以上ない自信をもてる商品になりました。
語り手: 株式会社リブラン 事業企画部 樋口
自然との共存を大切に、設計事務所にてコーポラティブハウスを手掛けてきたが、
もっと多くの人にこの思いを伝えたいとリブランに入社。
「エコヴィレッジシリーズ」の企画・設計を担当。一級建築士。