遺言書の作成で相続手続きをスムーズに

column2023-11-15

相続手続きのポイント ~遺言書の重要性と土地活用について~

土地活用を検討される方の中には、将来土地の相続を受ける方や、ご自身からご親族に土地を相続する予定の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
初回となる今回のコラムは、相続の前に必要な準備となる遺言書について解説します。

相続手続を行う際に、遺言書の有無によってそのやり方が大きく変わってきます。相続時に遺言書がある場合は、故人の遺志を尊重し、遺言内容の通りに相続手続を進めることが原則となりますが、遺言書がない相続の場合は、法定相続人全員で遺産をどう分けるかの協議(遺産分割協議)を行い財産の分け方を決定する必要があります。

相続における遺産分割で相続人同士がトラブルにならないよう、きちんとした遺言書を作成しておくことはとても重要です。

相続手続で最初に確認するポイント

ポイント1 法定相続人の確認

民法では定められた相続人を「法定相続人」と呼び、次のように相続人になれる者の順位が決められています。相続発生時は、まず「法定相続人」が誰であるかを正確に確認しましょう。

 

≪相続の順位≫

相続の順位 故人との関係
配偶者 常に相続人になる
第1順位 被相続人の子(子がすでに他界しているときはその子(孫))
第2順位 被相続人の父母(父母がすでに他界しているときは祖父母)
第3順位 被相続人の兄弟姉妹(兄弟姉妹がすでに他界しているときは甥・姪)

 

ポイント2 遺言書の有無の確認

上記の相続人が確定したら、次に被相続人が遺言書を残していないか確認をします。被相続人が存命のうちに、自筆で作成した自筆証書遺言の場合、銀行の貸金庫や、仏壇の引き出し、書斎の机の引き出しなどに保管されているケースが多いです。

また近年では、動画で遺言内容を撮影して保存しているケースもありますが、遺言内容が「書面」ではない為、法的拘束力を持つ遺言とは言えません。相続手続において、重要なことは法的に有効なものかの確認も大切です。

 

相続で使われる遺言書の種類

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、文字どおり遺言者が「自分で書いた遺言書」です。遺言書の全文、日付、氏名を遺言者が自ら書いて、これに押印することで要件を満たす遺言書です。
印は認印でも有効です。

なお、平成31年1月13日に民法が改正され、遺言書と同封する相続財産の目録を添付する際、財産目録はパソコン等で作成してもよいことになりました。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証役場に出向いて、公証人と作成する遺言です。遺言者本人のほか証人2人が立ち合い、公証人が面前で作成します。出来上がった遺言書の原本は公証役場に保管され、遺言書の写しである正本と謄本が渡されます。
紛失や破棄される心配がなく、形式で無効になる心配もないので最も安全な方法といえます。

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、公証人と2人以上の証人に遺言書の存在の証明をしてもらいながら、遺言の内容は立会人全員に秘密にすることができる遺言です。遺言内容を秘密にできるメリットはありますが、公証人や証人は遺言内容を確認しない為、法的拘束力を持たない遺言書になりうる恐れがあり、秘密証書遺言の作成は注意が必要です。

遺言別に異なる遺言書開封時の注意点

一般的な遺言書は、「自筆証書遺言」か「公正証書遺言」になります。ここでは、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の開封時のポイントについて解説いたします。

自筆証書遺言の開封

相続人が遺言内容の偽造・変造を防止する為に「検認」という手続を家庭裁判所で行う必要があります。相続手続を進める中で、自筆証書遺言を自宅で見つけても、その場で遺言を開封してはなりません。

遺言を発見した相続人は、遺言者の最終の住所地を管轄する家庭裁判所に遺言を提出し、検認申立を行います。申立を行うと、検認日時が家庭裁判所から指定され、関係者の立ち会いのもと、家庭裁判所の裁判官が開封します。

そして、開封された遺言書に裁判所の検認済証明書が付いて戻されますので、その後の相続手続は「検認済証明書が付いた遺言書」で行うことが出来ます。

公正証書遺言の開封

公正証書遺言は、公証役場に原本が保存されており、相続人による遺言内容の偽造・変造の心配がないため、検認手続は必要ありません。公正証書遺言作成時に、公証役場から交付された遺言書の正本や謄本で、その後の相続手続を行うことができます。

相続手続きのポイントまとめ

公正証書遺言も自筆証書遺言もどちらの遺言であっても相続発生時に大事なことは、速やかに遺言書の存在が分かるようにしておくことです。せっかく作った遺言書も見つからないと意味がなくなってしまうので、相続開始後すぐに相続人が遺言の場所が分かる手立ても講じておきましょう。

 

 

執筆者プロフィール

服部 誠(はっとり まこと)

税理士法人レガート
税理士・ファイナンシャルプランナー
税・財務の専門家として、個人の資産運用や相続・事業承継に関するコンサルティング、相続税の申告業務において多数の実績をもつ。
相続申告・贈与申告・譲渡申告などの関与件数は2,000件を超え、その経験を基にメディア等での執筆活動や講演活動も行っている。
著書:「相続税の税務調査を完璧に切り抜ける方法」(幻冬舎)、「贈与税の実務とその活用ポイント」(税務研究会出版局) 他多数。