ECO village
設計思想
第1回

今の「間取りの8割」に、私は反対です。

休日の午後。リビングのソファーで気持ちよくうたた寝していたら、開け放っていたリビングのドアがバシーンと、もの凄い音とともに閉まった、というような経験はありませんか?外から吹き込んできた風が廊下を抜けて、開けられていたドアを勢いよく閉めたのです。その大きな音で息が止まりそうになったという方も多く聞きます。

風を家に招き入れるには、風の入り口と出口が必要です。たとえば風は、バルコニーから入り、リビングや廊下を通り、玄関や玄関側の居室の窓から出て行きます(もちろん、この逆も)。その 風の通り道にあるリビングと廊下をつなぐドアのことを框(かまち)扉と言います。冒頭で、バシーンという音とともに風が閉めたのが、まさにこの扉です。入ってきた風は、この扉を通らなければ外へ抜けることができません。言い換えれば この扉付近は、風の流れが集中し、勢いがます場所でもあります。

ほかに風が通る道がなく、框扉を閉めるとバルコニー側と玄関側の風の流れやひとの導線が分断されてしまう間取りのことを、私は 田の字プラン と定義しています。框扉を抜ける以外、 風の通り道がないので、強い風が入ってきた場合や、いくつかの窓から入ってきた風の流れが集中した場合に、その勢いで 扉を閉めてしまうのです 。驚くことに、マンションの多くが、 田の字プランだといわれています。間取りを設計する際にほとんどのマンションが、風の流れや、風の回遊性について考慮してこなかったようです。これは、ひとりの設計士として、 憤りに近いものを感じます。

エコヴィレッジシリーズは、エアコンより自然の風を大切にするマンションです。夏場は、建物周辺に木陰 をつくり、そこの涼しい風を積極的に室内に招き入れようとする住まいです。私たちは風をとても大切にするだけでなく、風を天然のエアコン だと考えています。

また、トイレの扉以外は、すべて 引き戸 を採用しています。引き戸なら、風でとつぜん勢いよく閉まることもないし、開け具合によって風の量を調節することができるからです。

そして私は、間取りを設計する際には、 風の通り道 をいくつ確保できるか常に念頭において設計しました。 風が通る道が一本で、すべての風がそこに集中するようなプラン は設計したくない。風を分散して、住まいの 広い領域で風を回遊させることができる間取り をひとつでも多く設計したい。その使命感にも似た思いが、エコヴィレッジを設計する際の原動力となりました。

語り手:株式会社リブラン事業企画部 樋口
自然との共存を大切に、設計事務所にてコーポラティブハウスを手掛けてきたが、 もっと多くの人にこの思いを伝えたいとリブランに入社。「エコヴィレッジシリーズ」の企画・設計を担当。一級建築士。