Magazine
中古マンションとリノベを学ぶ

3度目のリノベで楽しむ、自分らしい「感性」と「機能」

お客様インタビュー (更新: )

楽ではないけれど、楽しい暮らし“てまひま暮らし”を実践している人を訪ねる企画「てまひま暮らし人」。第24回は、編集部がてまひま不動産 設計担当の内田とともに、東京都目黒区にあるお宅を訪ねました。

ご家族のライフステージの変化をきっかけに、中目黒に位置する築45年の中古マンションを購入したT・Mさん。好きなアーティストの作品やこだわりの調度品、そして2匹の愛猫に囲まれた暮らしをすべて叶える空間を、てまひま不動産とどうつくりあげたのでしょう? なんとこれで人生3度目のリノベーションになるというチャレンジだからこそ分かる、家づくりとの向き合い方も教えていただきました。

家を売却し、リノベ前物件を購入して理想の住まいをつくる

内田Tさん、お邪魔します。オペラピンクの壁紙が相変わらず素敵ですね。

Tさん内田さん、ようこそ! このピンクの壁紙が入ってきた光を柔らかく反射して、朝は隅々まで部屋に光が行き届いてとにかく明るいんです。夜も小さな照明でも十分なくらい。ささ、猫たちもお待ちかねですよ。

マンションは築年数45年のRC造、専有面積は58平米。2022年9月に引っ越し、住み始めて1年3ヶ月程度になる。「いつも窓を開けて部屋全体に空気が行き渡るようにしています。冬でも暖かく暖房いらず」とTさん。二重サッシ窓の先には入居の決め手となったお気に入りの眺望が広がっている。

左からTさん、てまひま不動産の設計担当の内田。お気に入りのアーティストによる作品をメインに設えたキッチン前のダイニングスペースには、小さなテーブルと椅子、ワインセラーが置かれ、ゆっくりとアートが楽しめる空間に仕立てている。

編集部Tさんはご結婚されて娘さんもいらっしゃるとのことですが、自分のために家を購入されたきっかけはなんだったんですか?

Tさんちょうど子育てを終えた時期に、家族それぞれが人生に邁進しようという機会が巡ってきて。いわゆる「卒婚」ですね。それで、賃貸住宅での土地活用を行なっているリブランさんに住んでいた土地を買っていただいて、私の住まい探しが始まりました。

リビングの造作棚、通称「ねこだんだん」は、キャットタワーと収納の両方の機能を持つ。気が付けば、みたまちゃん(メス、12歳)が部屋を見下ろしていたりと、猫たちのお気に入りスポットに。

リビングに置かれたお気に入りのヴィンテージの食器棚は、大正時代から実際に薬棚として病院で使われていたものをリメイク。来客時に活躍する食器たちが並ぶ。

内田たしか、ご友人にリブランが手がけている24時間楽器演奏が可能な防音賃貸マンション「ミュージション」のオーナーさんがいらっしゃって、そこからリブランのことを知ったんですよね。

Tさん何度かミュージションに遊びに行った時、素敵な建物だなぁと思って「これなら私の住まいもお任せしても大丈夫だろう」と、新居の家探しもお願いすることにしたんです。ただ、最初はリノベーションではなく、リノベ済み物件の購入を考えていて。

リビングの隣の寝室。インド刺繍のブランケットは手づくりの一点もので、色のトーンを壁紙と揃えた。Tさん曰く、東向きの部屋なので、朝の目覚めがすごく良いのだそう。旧居から持参したヴィンテージの棚には日々身に着けるアクセサリーたちが並ぶ。

編集部どんな条件で家を探されていたんですか?

Tさん「せっかく住むならおしゃれなところに住みたい!」と思って、中目黒周辺に絞って探しました。中目黒は日比谷線の始発駅でもあるし、会社へのアクセスも良好で利便性が高いエリア。リノベ済み物件と合わせて5件くらい案内してもらって、最後に出会ったのがこの家でした。

編集部ここだけリノベ済みではなかったんですよね。

Tさんそう。猫を飼っていたのでペット可能物件というのは前提でしたが、広さも58平米と理想的で、なんといってもベランダからの緑溢れる景観が素晴らしかった。隣にお寺の庭があって木々から四季を感じられるし、そこは高い建物が建たない土地だと聞いたので、ずっと日当たりが確保できるのも良いなと。築年数は45年とやや古いものの、管理体制がしっかりしていているのも安心ポイントでした。何より、物件の価格も5,000万円程度と同エリアの他物件よりお値打ちだった。浮いた予算をリノベに回せば、自分の理想の空間がゼロからつくれると確信したんです。

ゆうきくん(オス、14歳)は明るい寝室でゆったりとした時間を過ごすのが好き。

編集部物件を1日で決めるなんてすごい決断力……! リノベーションへの切り替えも早いですね。

Tさん実は、私自身リノベをするのは今回で3回目なんです(笑)。リノベ済みの分譲マンションだとすでに間取りが決まっているので、置きたい家具があっても置けなかったりと、どこか妥協点が出てきてしまうと思うのですが、その点リノベは自分の暮らしに部屋自体を合わせることができる。営業さんと内見を進めていくうちに「こうしてみたい、ああしてみたい」って理想の住まいのイメージがどんどん膨らんできてしまって。もう、一目惚れですね。

グレーが基調のキッチンとダイニング。ピンクのゾーンが主張しすぎることのないよう、「ダイニングの壁のフレキシブルボードの目地とルーバーの線でシャープな“線のデザイン”を意識しました」と内田。壁はあえてセメント系のフレキシブルボードを用いて無機的な質感のあるものに。中央のキッチン台はトクラス製「コラージア」で、床は機能性を重視してグレーの塩ビタイルを採用。

リノベーション前の間取り図。

リノベーション後の間取り図。部屋ごとに仕切る扉をなくし、部屋全体に風が心地よく流れる間取りに変更。加えてロボット掃除機が隅々までスムーズに動けるように部屋全体の段差を解消した。一方、天井はエントランスから段々と高さをつけることで、空間が広がる構成に。

お気に入りの作品や調度品を空間の主役に

内田2022年1月から打ち合わせをスタートして、Tさんと僕で話し合いながらデザイン案をブラッシュアップさせていきました。

編集部デザインは具体的にどうやって決めていったんですか?

Tさん好きなアーティストの作品や、お気に入りの照明器具、とっておきの家具など、置きたいものがすでにいくつか決まっていたので、それらが映える空間にするにはどうしたらいいか、それも含め一緒に考えてもらいながら進んでいきました。てまひまのスタッフさんたちは私の要望をヒアリングしてくださり、予算を含めた最適解を一緒に探してくれて、とにかく真剣にこちらの意見に向き合ってくださいましたね。

Tさんお気に入りのキッチンのルーバー。ルーバーはツガ材を赤みがかった黒(エボニー)に着色し、ダーク系の色合いで空間を仕切る役割を果たしている。

上)照明は空間にあうテイストのものを探して、作家物やトルコランプなど、少しずつ取り揃えていった。下)リビングとダイニングには、絹を扱うお気に入りの造形作家さんの作品が並ぶ。

内田最初、Tさんからいただいたイメージは「パリのアパルトマン」でしたね。コンパクトな部屋が多いパリのインテリア事例には、家具や建具を工夫しながら機能的かつおしゃれに暮らしているパリジェンヌたちの知恵がたくさんある。そこからTさんが暮らしのうえで大切にしたいこと、たとえば空間の主役にしたいもの、置きたいもの、生活導線、お手入れのしやすさなど、意見をデザインに盛り込みながら案を練っていき、3回ほど変遷があったと記憶しています。

左)内田が「本の回廊」をイメージして造作した大きな棚。右)玄関の土間スペース、靴収納(可動棚)の上には室内窓があり、空気が通るようになっている。

左)洗面台はシンプルでお手入れしやすい設計。右)トイレの壁紙もピンク。アクセントとなっている光触媒加工のフェイクグリーンには消臭・抗菌効果もあるのだそう。

編集部このお部屋に入った時からビビッドなピンクがとても印象的で素敵な色合いだと思っていたのですが、部屋のトーンについてはどの段階で決まったんですか?

Tさん壁紙をピンクにしようと決めたのは、終盤の頃でした。部屋のトーンについては最初から白を極力使わないということだけ決めていたんですが、なかなか決まらなくて。パリのアパルトマンを参考に薄いパステルで統一して、落ち着いた感じにしてみようと画策していた頃もありましたが、壁紙に差し色を選ぶことでそれぞれの空間を区切る工夫をしている事例を見かけて、それ以来、各空間に別々の色をふんだんに取り入れてみたいと考えるようにもなり……。

内田フランスは賃貸であっても、原状回復を条件に自由に壁に色を塗ったり、壁紙を張ったりしても良いので、パリのアパルトマンでは個性的なカラーリングや柄物のクロスを使っている家が多いんですよね。

Tさん最初はキッチンを緑、寝室をブルーと、バラバラの配色にしようとしていたんですけど、キッチンの壁紙の色にちょうどしっくりくるものがなくて。そんな時、内田さんが「例えばキッチンをグレー基調にして、グレーと相性のいい色をひとつだけ選んで部屋全体の統一感を優先しませんか?」と助け舟を出してくださって。そのひと言で、思い切ってこのオペラピンクの壁紙にしました。

内田Tさんとゴッホの絵画『夜のカフェテラス』に登場する南フランスのカフェテラスのように、空間をあえてはっきりと区切りきらず、ゆるやかにゾーニングする感じにしようと認識を合わせることにしたんです。壁の色が固まったことで、床の材質なども自然とウォルナットの無垢材に決まりましたね。

Tさんリノベーションは最後まで全体像を見ることができないので正直ドキドキする時間もありましたが、てまひまのスタッフさんと不安な部分はとことん話し合えたこともあり、施工を終えて空間の全貌を初めて見た時はとてもおさまりの良い空間になったと感動しました。しっかり相談できる信頼関係を築いてくださったからこそ、ここまで満足のいく形に仕上げることができました。

大切なのは「お手入れのしやすさ」

寝室・リビング・廊下の床材は木肌が美しく耐衝撃性にすぐれるウォルナット。濃い色が壁紙のピンクをぐっと引き立てる。

編集部これまでもリノベをされたことがあるそうが、今回はどんな変化がありましたか?

Tさん旧居のリノベでは、ビルの2階を大きく改装してホテルライクなテイストに挑戦しました。おしゃれには仕上げられたのですが、床材にタイルを選んでしまったため、毎日の目地の掃除がとても大変で……。今回はその反省点を活かして、お手入れのしやすさや換気といった機能性についてもとことんてまひまさんと考え尽くしました。おかげで、デザインや要望を叶えながら、私が長く住み続けるうえで使い勝手が良い空間を両立することができたと思います。

寝室とゲストルームを結ぶウォークスルークローゼット。Tさんのお気に入りの一着一着にもしっかりと新鮮な空気が通る。

内田それはなによりです。Tさんのご自宅はピンクの色がすごく印象的なので、もしかすると弊社の他の施工事例と並べて紹介すると驚かれる方も多いかもしれませんが、実は風の流れやお手入れのしやすさ、そして周囲の景観をうまく空間に取り入れた、とてもてまひまらしい空間なんですよ。

Tさん結局、毎日家をお手入れするのは施主である自分ですからね。リノベとなると、どうしても見た目のデザインが先行しがちですが、快適な暮らしを送るために掃除のしやすさってとても重要な要素だと思うんです。そうした細かい部分も含めて、「私」の暮らしの形をオーダーメイドでてまひまさんと一緒に考えてもらえたんだと思うと、なんだかとても贅沢ですね。

ゲストルームと玄関土間の間を結ぶ通気窓。窓の位置を変えられない中古マンションでも風が通るようになり、結露やカビ・ダニの繁殖を抑えることが出来る。

編集部引っ越されて1年余りが経過したかと思いますが、こちらに住んでみていかがですか?

Tさん朝日をたっぷり浴びながら外の景色を見て深呼吸するのがお気に入りの時間ですね。休日は家族や友人が泊まりに来ることも多いし、私が中華料理を習っているので、友人を複数人呼んで、このキッチンで大皿を囲んだホームパーティーをする時間が楽しい。暖かい季節には、夜に月を見ながらベランダでお酒を飲んだり。中目黒には元気な商店街やユニークな個人店が多いので、近所開拓していても飽きが来ません。

編集部最後に、今後リノベーションを考えている方たちにアドバイスがあればお願いします!

Tさん今回で3回目のリノベを終えたものとしてアドバイスするならば、自分自身の暮らしぶりやニーズをよりリアルに汲み取ってもらえるように設計士に伝えることが大切。周りのリノベ経験者に話を聞くと、施主の意向を設計士が全然反映してくれないという経験をした人もいるそうです。毎日住むのは施主である自分なのに、最終的に出来上がった空間が自分にとって使い勝手が悪くなってしまうのは残念ですよね。てまひまのスタッフさんたちは、“私の暮らし”を第一に、丁寧に要望を汲み取って形にしてくださったのが印象的でした。また、以前のリノベでは施工会社の都合で入居まで待たされてしまったこともあったのですが、てまひまさんは施工を行う職人さんたちと設計士さん側で連携がしっかりとれていたので、スケジュール通りに進めることができました。

本の回廊にはTさんの愛書のほかに、猫たちの手に届かないようお雛様やお花など季節のものを飾ることも多く、ご友人が訪れた際の話題づくりにもひと役買っているそう。

夜中に「ねこだんだん」からイタズラしてみたり、キッチンカウンターでくつろいだり……。猫ちゃんたちもこのおうちでの暮らしを満喫しているそう。

内田どんなに造りの凝った美しい内装だとしても、そこに住む人のお手入れが難しかったら、その美しさを長く楽しんでもらうことはできませんからね。今回Tさんとご一緒しながら、私たちもたくさん学ばせていただきました。

Tさんこちらこそ楽しかったです。リノベは、自分の生活スタイルに合わせて、空間をつくることができるので、実現したい暮らしや、自分にぴったりの生活空間がほしい人にこそオススメしたいですね。

お気に入りの作品や、調度品、ゲストと過ごす空間、そして大切な猫ちゃんたちとの暮らし。たくさんの「叶えたい」をてまひま不動産と二人三脚で実現させたTさん。光を受けていつも明るいオペラピンクの空間は、こだわりに満ちていながらも、毎日を気持ち良く過ごせる機能性に裏付けられたものとなりました。


企画:株式会社リブラン
文:遠藤ジョバンニ
編集:tarakusa
写真:土田 凌