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暮らしスタイルマガジン
「てまひま手帖」

「私たち仕様」をカタチに 夫婦のスケッチからリノベを実現

お客様インタビュー (更新: )

楽ではないけれど、楽しい暮らし“てまひま暮らし”を実践している人を訪ねる企画「てまひま暮らし人」。第25回は、編集部がてまひま不動産 設計担当の内田とともに、東京都練馬区にあるお宅を訪ねました。

家族3人で長く快適に住める家を求めて築26年の中古マンションを購入し、リノベーションに挑戦した横山家。ご夫婦ともに仕事でデザインに携わっているという経験を活かして、細やかなスケッチをもとにデザインを進めたそう。開放感を優先して潔く間取りを変更し、家族が心地良く過ごすための空間づくりのコツを伺います。

「そろそろ買う?」から始まった家探し

内田お邪魔します。光の具合がちょうどいいメロウな空間で落ち着きますね。

曜さん内田さん、お久しぶりです。おかげさまで良い感じになりました。照明は気に入ったものを少しずつ買いそろえているところなんですよ。

壁や天井を極力取り払って実現した、開放的な雰囲気のダイニングとリビングスペース。左から設計担当の内田と曜さん、佳那子さん。娘の麦ちゃんは4歳。

編集部デザインを生業にされているおふたりならではのこだわりが満ちた空間ですね。家探しはいつから始めたんですか?

曜さんこれまで賃貸に住んでいたのですが、娘が1歳になる2021年から家の購入を考えるようになりました。間取りも2人向けで狭かったし、キッチンや収納、家具などの配置が決められた暮らしはなんだかしっくりこなくて。家を購入した知人からの勧めもあり「そろそろ買おうか」という気持ちが固まっていきました。

天井のコンクリートあらわし仕上げと観葉植物のコントラストが鮮やかなリビングスペース。南向きの大きい窓から写真左の書斎に室内窓を通して風と光が行き届く。

編集部どんな条件で探していたんですか?

曜さん妻も僕も吉祥寺のまちが好きなのと、僕の実家に近いこともあり、吉祥寺周辺のエリアを希望していました。てまひま不動産のことは、母が「西荻窪に良さそうな不動産があったよ」って教えてくれたんです。家を探すなら、やっぱり地域に根差していて、エリアのことを熟知している不動産会社にお願いしたいなと思いました。

リビングの向かいには麦ちゃんのおままごとスペース。絵本は本棚、おもちゃたちはこどもキッチンの引き出しに入る分だけという散らからないためのルールがあるそう。

内田弊社が実際にリノベーションを担当した物件を見学用に公開する「完成見学会」にご来店されたのが最初でしたよね。

佳那子さんはい。そこで営業担当のKさんと出会いました。年齢も近いから話しやすいし、てまひま不動産が大切にする自然素材や風通しは、私自身も大切に思うことだったのでぜひお願いしたいと思いました。無垢材の魅力を知ったのもこの時でしたね。

曜さん家探しのことも予算のこともまったくわからないところからのスタートだったので、Kさんがとても親身に相談に乗ってくださって安心でした。

リビング横の書斎スペース。扉と窓枠はラワンベニヤで造作したもの。曜さん自身が亜麻仁油を主成分に配合されたワトコオイルを塗り、アンバーで深みのある色味と質感を引き出した。

書斎にはデザイナーである曜さんの仕事道具や参考書籍、趣味の楽器が整然と収納されている。壁の有孔ボードに直接フックや棚を設置すれば新たな収納を生み出せるのがポイント。クルミの床材は傷がつきにくく、耐久性が高いのが特徴。

編集部最初からリノベーションを希望しているわけではなかったんですね。

曜さん家探しをしているうちに徐々にリノベーションに興味が出た、という感じですね。リノベーション済みの物件もいくつか内見しましたが、綺麗だけどどこかフェイクに感じてしまって。ふたりともコンクリートがむき出しになっているような素材感を活かした雰囲気が好きなので、自分たちの理想の住まいを手に入れるためには、既存物件ではなく自分たちでデザインするリノベーションに舵を切ったほうがいいなと思い至りました。

回転窓は「書斎のなかからの景色の抜けを感じたかった」と曜さんの希望で設置。

洗面室とリビングを隔てる壁に埋め込まれたガラスブロックは、佳那子さんが「いつか使ってみたかった素材」と採用したもの。灯りが優しくリビングに漏れる。

佳那子さんこの物件は駅からの道すがら公園や畑が多く、緑豊かでのどかな雰囲気が気に入りました。窓が多くて風通しや採光もしっかり確保できそうだし、75平米と広さも十分。金額も予算内でまさに希望通りでした。

曜さん到着する前からふたりで「ここ良いね」って話していたんですよ。保育園も近くにあったし、実家も近いから子育てサポート体制が揃っていたのも決め手でした。

佳那子さんそれに、内見でKさんが「この壁は取り払えるのか」「どんな間取りが可能なのか」などプロ目線でアドバイスをくれたのも心強かったです。

曜さん物件ごとに見積り書をつくってくれたのも良かったですね。この物件だとどれくらいリノベーションにお金がかけられるとか、月々の返済額はいくらになるとか。決断する時の判断材料になりました。

左)廊下はガラスの建具で仕切りつつ、室内とのつながりが感じられるように工夫。奥の扉から寝室に繋がる。右)洗面台は「toolbox」で手配したもの。白タイルが洗面空間に明るさと清潔感を生み出す。

妻と夫、それぞれの”重視”を実現

編集部デザインはどんなふうに進めたんですか?

内田まずは営業スタッフが横山さんからのヒアリングで作成した見積り書をもとにしつつ、僕からはそのご予算のなかで叶えたいデザインについてのイメージや希望をヒアリング。そして、全体デザインを提案させていただく。そこからおふたりとイメージをすり合わせて、実現したいことの優先順位をつけていくという流れです。

曜さん僕は「素材」を重視していました。壁紙を貼れば手軽に空間の雰囲気をつくれるかもしれませんが、コンクリートや無垢材など、素材そのものが活かせる素直な空間にしたかった。もとは部屋数が多い間取りだったのですが、壁や天井を取り払って部屋全体をコンクリートむき出しにして開放感を出せたらなと考えていました。

内田このマンションは壁式構造(耐力壁と呼ぶコンクリートの壁で建物を支えている代わりに柱や梁がない構造)のため間取りの不自由さはあるものの、柱型や梁型がないのでスッキリした空間になります。

曜さん壁紙は実際に剥がして見たら、コンクリ面が綺麗でなくて見せるスタイルには向かない部分もあったので、リビングの天井部分だけはコンクリートあらわしにして、ダイニング部分の天井と壁はペンキ塗装を施すことでバランスを取りました。

部屋を仕切っていた壁を極力なくし、一つひとつの空間を広くとるプランに。ダイニングやリビング、寝室に窓とバルコニーがあり、日当たり抜群。

佳那子さん私が重視していたのは「風通し」ですね。家のなかで子どもとふたりきりで過ごしていると、どうしても滅入ってしまうことがある。そんな時は窓を開けて外の空気を感じるだけで気分転換になるんです。この物件は3面採光で1日を通して日当たりが確保できるし、窓の数が多いことを活かして風の通り道をてまひまさんとしっかり考えることが出来て良かったです。あと、キッチンもこだわりたいポイントでしたね。スペースを広く確保し、リノベが決まったタイミングで見つけたUSEDのキッチン台を中心にレイアウトを決めていきました。

サンワの「OSSO」シリーズ(左)と「D&DEPARTMENT」のUSEDのキッチン台(右)を組み合わせ、スタンダードなスタイルが魅力的なキッチン。

キッチン奥の可動式収納棚はラワンで造作。

内田キッチンは佳那子さんがスケッチを描いてくださいましたよね。賃貸時代のお住まいの写真もいくつか拝見しましたが、とてもスタイリッシュですっかり魅了されました。センスの良い家づくりをする人は、日頃の暮らしぶりも素敵なんだなと。

佳那子さん内田さんが素敵なスケッチを描いてくださるので、私たちも負けていられないなと思って(笑)。

ステンレスの食器棚はインド製。カトラリーや食器、調理器具に合わせた仕切りを備えているため、コンパクトに収納できる。

キッチン床は無垢材からモルタル風塩ビタイルに切り替えることでコストと機能性を両立。

編集部書斎も「素材」と「風通し」のこだわりが詰まった場所ですよね。

曜さん書斎は主に僕の作業スペースとして使っています。ラワンでしつらえた回転窓を開けると空気が巡るし、リビングにいる家族の気配も感じる。状況に応じて窓を閉めればオンオフを切り替えられるのが良いですね。間取りを考える時に子ども部屋を設けるか悩みましたが、書斎を含めたリビングやダイニングを広く取ることで家族がそれぞれに伸び伸びと過ごせる広さを確保することに振り切りました。

編集部あえて子ども部屋をつくらないということもひとつの選択ですよね。床材はどうやって決めたんですか?

曜さん浅い色だと和風っぽいテイストになるし、濃い色で木目のコントラストが強いとゴージャスな印象になりすぎてしまうので、どの床材を入れるかはかなり悩みました。ショールームに足を運んで自分たちの目で確認して、素材に触れて、最終的にラワン材と相性の良さそうなブラックチェリーとクルミを選びました。

リビングとダイニング、廊下の床材は赤褐色の色味と滑らかな質感が特徴のブラックチェリー。

打ち合わせでは佳那子さんや曜さんが間取りに合わせて描いたスケッチとイメージ写真を持参し、細部のイメージを設計士と共有した。

仕事や子育てに奮闘する夫婦を空間づくりで応援

編集部暮らして2年になりますが、住み心地はいかがですか?

佳那子さん無垢材の床って、湿気が気になる夏場も快適で気持ちが良いですね。それに冬場って足元から冷えが登ってきたりするじゃないですか。でも無垢材の床だと冬場も温かいんですよ。ずーっと裸足で過ごしています。

空間に寄り添う照明は「PACIFIC FURNITURE SERVICE」や「GENERAL VIEW」などのセレクトショップのほか、骨董店でご夫婦が気に入ったものを時間をかけて集めたもの。

曜さんあとは、家具や照明など気に入ったものを見つけて空間を埋めていく作業が楽しいですね。今も休日は家族でお店を回って照明や新しい本棚を探しているところです。

リビングは佳那子さんの作業スペース。「interiors Pocket Park」で購入したヴィンテージのスタンド照明は、中国の伝統的な円錐帽子にも似て“china”の愛称で親しまれる。

寝室は洋室2部屋分の壁を取り払って余白のある空間に。寝室脇にはウォークインクローゼットが設置され、家族全員分の衣類や布団などがたっぷり収納できる。

玄関スペースはモルタルでシンプルな土間に。ベビーカーが置ける広さを確保。

編集部最後に、これからリノベーションを検討している方々へのアドバイスをお願いします!

佳那子さん予算はもちろん重要ですが、これから暮らす時間のことを考えたら実現可能な範囲で思いきりこだわり抜いてほしい。私はガラスブロックを部分的にしか使いませんでしたが、もう一度リノベーションできるならトイレや洗面所の壁全面に使うと思います。それほど気に入ったものであれば、やりきったほうが暮らしがもっと豊かになるはず。

曜さん僕は購入前に家具でも床材でも、何でも実物を見に行くことをオススメします。今はインターネットで色々なインテリアや施工例が見つけられて便利ですが、実際にショールームやショップに足を運んで、納得いくまで見て、触って、確かめる作業が大切だと思います。

内田大事なポイントですね。てまひま不動産も、横山さんご家族のように熱量をもって理想の暮らしを追い求めるお客様に応えられるように、知識とノウハウでその実現をサポートしていきたいです。

新しい暮らしのなかで増えた好きな時間。曜さんは「起きてすぐブラインドから漏れる朝日を植木越しに眺めている時間」。佳那子さんは「夕方にキッチンに立ってビールを飲みながら窓からの景色を眺めている時が幸せ」なのだそう。

お子さんの誕生から家族みんなの理想の暮らしにむけて、ひとつずつてまひま不動産と吟味を重ねた横山さん一家。風と光が行き届くスタイリッシュな空間は、横山さんたちが「心地良い」と感じる素材や家具へのこだわりによって緻密に組み立てられ、仕事や子育てに奮闘する一家の毎日を彩っています。


企画:株式会社リブラン
編集: tarakusa
⽂:遠藤ジョバンニ
写真:丹野雄二