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「てまひま手帖」

小さな空間を広く見せる 防音リノベから描く夫婦の家づくり

お客様インタビュー (更新: )

楽ではないけれど、楽しい暮らし“てまひま暮らし”を実践している人を訪ねる企画「てまひま暮らし人」。第31回は、てまひま不動産の営業担当・笹川とともに東京都練馬区にあるお宅を訪ねました。

楽器を演奏する人なら、家でも気兼ねなく音を出したいと願うもの。趣味で演奏を楽しむSさんご夫婦も、住み替えを考えた時、まず思い浮かべたのは「防音室をつくること」でした。新築戸建から中古マンションまで幅広く検討し、最終的に選んだのは築26年の中古マンション。広さはなんと41平米。希望の防音室を叶えたうえで心地よく暮らすために優先したこと、工夫をしたこととは?

家は「使いこなせるサイズ感」で決める

笹川おじゃまします。こちらに引っ越されてもう7年ですね。暮らし心地はいかがですか?

AYUMIさん笹川さん、こんにちは。友人が遊びに来るたびに「本当に41平米なの?」って驚かれるんですよ。フルリノベに挑戦して本当に良かった。

手前左からAYUMIさんとTAKESHIさん、奥が営業担当の笹川。

AYUMIさんは友人に誘われて参加した沖縄のイベントがきっかけで三線と出会い、そこから教室に通い始めたそう。

編集部リノベーションをしようと思っていたのはいつ頃から?

AYUMIさんきっかけは賃貸の更新のお知らせが届いたこと。古い物件だったので住み替えを考えていたのと、当時は40代だったので、ローンを組むなら今がラストチャンスだろうなと。夫がエレキギターを、私が三線を弾くので、好きな時に思い切り演奏できる防音室が欲しかった。その話を会社の先輩にしたら「てまひま不動産なら防音施工もやってるよ」と紹介してくれたんです。

笹川「てまひま不動産」を運営するリブランは、自然素材を使った住宅づくりに加えて、24時間演奏可能な防音マンション「ミュージション」も展開しているので、防音のノウハウには自信があります。おふたりは新築戸建から中古マンションまで幅広く検討されていたので、まずは条件を伺うところからスタートしました。

AYUMIさん夫は車通勤、私は自転車通勤。そのうえで、それぞれが職場まで30分以内でアクセスできて最寄り駅までの距離も徒歩10分以内だったらいいねという条件でした。最初は西武線沿いで探していたものの、なかなかしっくりくる物件が見つからず、エリアを東武東上線沿いまで広げて、ようやく出会ったのがこの中古マンションでした。

TAKESHIさんしかも、妻の実家から歩いて10分くらいなんですよ。

AYUMIさん目の前の商店街もよく遊びに来ていた思い出の場所。通っていた保育園も近いんです。懐かしい気持ちになりましたね。

笹川ご縁ですよね。お決めになったマンションでは50平米の2LDKと、今お住まいの41平米の1LDKの2部屋をご案内しました。

編集部あえてコンパクトなお部屋を選ばれたんですか?

AYUMIさん最初から平米数はあまり気にしていなかったんです。むしろ、自分たちにとって使いこなせるサイズ感であるかどうかが大事だった。41平米の部屋はスケルトン状態で、これから自由につくり込める余白があるのも魅力でした。最後の決め手は窓からの景色。上の階にあるこの部屋から神社の大きな木が見えた時、「ここをフルリノべして防音室をつくろう」と思ったんです。

TAKESHIさん正直もうひと部屋あってもいいかなと思ったけれど、それはそれで掃除する場所が増えるし、僕たちにはこの広さがちょうど良かったですね。

小さな空間に広がりを生む工夫

編集部デザインプランニングはどのように進められたんですか?

AYUMIさん賃貸の更新時期が迫っていたので、スピード感を持って進める必要がありました。でも、最初に決まっていたのは防音室をつくることだけで、あとは完全にノープラン(笑)。設計担当の内田さんにヒアリングで引き出してもらったり、ショールームを見学したりするうちに、「壁は白にしたい」「収納を確保したい」「自然素材を使いたい」など少しずつリクエストが出てきました。

間取り図のビフォーアフター。壁向きだったキッチンを対面式に変更。

笹川まずは防音室ですね。防音施工は部屋のなかにもうひとつ「箱」をつくるようなイメージで、壁や天井、床を二重構造にして音や振動を防ぎます。どうしても空間がひと回り狭くなってしまうので、設計担当の内田はその特徴を逆手に取り、家の中にもうひとつ「小さな箱」があるような空間をイメージをしながらデザインしました。防音ガラスの引き戸を使うことで圧迫感をやわらげ、空間につながりを持たせて広く見せる工夫をしています。

AYUMIさんパッと見て、防音室だとは誰も気づきませんよね。寝室も兼ねているので、収納付きのダブルベッドがぴったり収まる奥行きに設計していただきました。

防音室兼寝室。枕元の壁には棚を造作して収納スペースを確保。

防音室は土台から切り離した構造で音や振動を防ぐ。

編集部壁に掛けられたギターも、いいアクセントになっていますね。

TAKESHIさん以前はスタンドに立てていたのですが、有孔ボードなら壁面収納できるから無駄がない。それもあって、1本増えました(笑)。

有孔ボードにギターハンガーを設置するだけで、収納とディスプレイを兼ねられる。

防音室の側面には外壁に使われる「ガルバリウム鋼板」を採用。AYUMIさんの提案。

防音室と壁との隙間にはハンガーパイプを設置して衣類掛けに。小さなスペースも無駄なく活用。

AYUMIさん防音室をつくってよかったことは、演奏はもちろん、Web会議にも使えること。コロナ禍で在宅勤務になった時、私がリビングで電話を、夫が防音室でオンライン会議をしていても、お互いの声がほとんど聞こえない。扉を閉めるだけで洗い物やテレビの音も気にならなくなるので、本当に助かっています。

TAKESHIさんもともと壁向きだったキッチンは、窓の外の景色が見えるように対面式にしました。

AYUMIさん窓の外には神社の立派な木があって、夏は青々とした葉っぱ、秋は紅葉が楽しめる。私は窓からの景色も家の一部だと思っているので、家全体がひとつながりになるように配置を考えました。視線が外まで抜けて、空間が広く感じられますね。こんなふうに、防音室はガラス扉にする、小さな収納をたくさん設ける、壁は白くする、キッチンの配置を変更することで、とても41平米には感じない広がりのある空間を実現することができました。

キッチンから眺める景色がAYUMIさんのお気に入り。防音室と天井の間の隙間も収納スペースに。

キッチンの家電も壁紙と合わせて白で統一。笠木は左端を短くカットし、薄い白板を貼ってスッキリ見せる。

編集部自然素材のこだわりも教えてください。

AYUMIさん無垢材の床は、てまひま不動産の店舗で体験した時から絶対に取り入れたいと思っていた素材のひとつ。冬は冷えないし、夏はさらっと足触りが心地いい。珪藻土クロスも体に優しそうだと思って採用したところ、部屋に湿気がこもりにくくなった気がします。物件選びから工事、引き渡しまで、約半年で一気に駆け抜けましたが、営業の笹川さんと設計の内田さんの連携が本当に素晴らしくて、安心して進めることができました。

笹川嬉しいですね。リノベは決めることが本当にたくさんあるので、時間をかけて悩まれる方も多いんです。おふたりはひとつずつしっかり決めて短期間で進めてくださったので、それがスケジュール通りに進んだ大きな理由だったと思います。

編集部まさに、家づくりはチームプレーですね!

珪藻土クロスや無垢床などの自然素材は、湿気を吸ったり吐いたりして室内の湿度を調整してくれる役割を持つ。

ショールームで防音性能を体感

AYUMIさんそういえばこの間、ふたりで不動前にオープンしたリブランのショールームに行ってきたんです。

編集部どうしてこのタイミングで?

笹川2024年11月に不動前にオープンしたこちらのショールームでは、防音リノベの施工例を直接見て、楽器を持ち込んで防音性能を体感することができるんです。おふたりはすでに防音室を施工済みですが、改めて「どれくらい聞こえないのか」を体験していただき、今後演奏する際の目安にしてもらえたらと思ってお声がけしました。

防音性能を体感できる不動前のショールーム。体験は事前予約制。

TAKESHIさんこれまで自宅の防音室で演奏をしてきたものの、実際にどれくらい音量まで出しても大丈夫なのか確かめる機会はなかったんですよね。「これはいいチャンスだ」と、ショールームにエレキギターとワイヤレスのアンプを持ち込んで実験することにしました。アンプは防音室に置いて、隣の部屋でヘヴィメタルを大音量で弾いてみたんです。そしたら、ほとんど音が聞こえていなくて驚きました。それ以来、これまで以上に安心して弾いています。

笹川これからリノベで防音室を考えている方には、ぜひ一度体感していただきたいですね。

AYUMIさん思い切り演奏できるとリフレッシュになりますよね。私も忙しくてしばらく三線から離れていたけれど、そろそろ練習を再開しようかな(笑)。

10代でギターを始めたTAKESHIさん。防音室で気兼ねなく演奏する時間が日々の楽しみ。

リノベーションをきっかけに自分たちの暮らしと向き合い、防音室を中心に一から描き上げたAYUMIさんとTAKESHIさん。部屋の広さに捉われず、どう使いこなすかを考えることが、快適な暮らしにつながる。コンパクトなスペースを無駄なく活かす工夫が詰まったおふたりの住まいには、今すぐにでも取り入れたい家づくりのヒントがたくさん散りばめられていました。


企画:株式会社リブラン
編集・文: tarakusa
写真:丹野雄二(提供写真以外)

◯不動前ショールーム
RC造のマンションに防音リフォームを施したショールームでは、Box in Box、二重サッシ、防音ドアなど、さまざまな防音施工を直接見て、防音性能を実際に体感いただくことができます。お問い合わせやショールーム見学のお申し込みは、ミュージション防音リフォームページの下部にあるフォームからどうぞ。